車両サイズや価格が非常に近い2台であるホンダヴェゼルと日産キックスを実際に試乗して比較する。各項目において◯✕判定をし、最終的にどちらを買うべきか結論付けていくので参考にしてほしい。
価格とグレードについて
ヴェゼルはガソリンとハイブリッドの2つのパワートレインがあり、グレード展開はハイブリッドで、e:HEV Ⅹ・e:HEV Z・e:HEV PLaYの3種類の展開となっており、価格は2,658,000円~3,298,000円の設定となっている。
対して日産キックスは、FFハイブリッドのみの設定。グレード展開はX・Ⅹツートンインテリアエディション・AUTECHの3つのグレード展開であり、価格は2,759,000円〜3,114,000円の設定で販売となっている。非常に価格が近く、街乗りに最適なサイズ感のこの2台。走りの気持ちよさやハイブリッドのトレインを強く売り込んでいる。
加速感について
ヴェゼル | 直列4気筒1.5L エンジン |
最高出力 | 106PS/5,200rpm |
最大トルク | 127Nm(13.0Kgfm)/4,500pm‐5,000rpm |
モーター最高出力 | 131PS(96kw)/4,000‐8,000rpm |
モーター最大トルク | 253Nm(25.8kgf・m)/0- 3,500rpm |
ヴェゼルに搭載するe:HEVは、エンジン走行とモーター走行の巧みな使い分けによるホンダらしい走行が特徴。街乗りではモーターのみで行うEVモードを使用。50km/hまではエンジンを完全に止めて加速を行うので、非常になめらかで電気自動車のような加速感を特徴とする。
この他、エンジンモード・ハイブリッドモードを備えていて強い加速が欲しい時や高速領域などではエンジンを使い分け、場合によってはエンジンを駆動に直結して加速を行う。他のメーカーでは力不足が目立つハイブリッドシステムだが、使い分けにより加速も気持ちよく行うことができる。しかし、エンジン音が聞こえる部分があるため注意が必要である。
キックス | 直列3気筒1.2Lエンジン |
最高出力 | 82PS/5,200rpm |
最大トルク | 10.5kgfm/3,600rpm |
モーター最高出力 | 129PS |
モーター最大トルク | 260Nm |
ヴェゼルよりもエンジンの排気量が小さいが、モーターの出力やEVのようなモーター走行の世界観を強めていて、e-POWERを搭載しているのがキックス最大の特徴だ。
ホンダe:HEVのシステムと打って変わり日産e:POWERは加速のみに使い、加速をモーターだけで行うためノイズを可能な限りカットしているのが特徴だ。車両が路面の状態に応じて、エンジンの駆動を制御する技術を日産として初採用。
路面が綺麗な状況であれば、振動ゼロを実現しているため驚くべきモーター走行の力を感じることができる。ハイブリッドモーターの出力はヴェゼルよりも少し小さいが、モーターに依存して加速する世界感は、街中の領域では静粛性が非常に高く快適に走行することができる。こちらはモーターだけで加速を行うため、中速域以降からの加速域には物足りなさを感じるところだ。
とくに高速道路の領域は加速力に課題がある。高速領域で加速を求めるのであれば、ヴェゼルが無難。と言える。
ハンドリングについて
2021年に販売された新型ヴェゼルは高いボディ剛性を活かした非常に優秀なハンドリング性能を持ち、中立付近の落着き感は素晴らしい。ハンドルを切り出した時の反応はキックスよりもゆったりとしており、高速道路を走行している時はクラスを超えた走りの安定性を持つ。ヴェゼルのすごい点はハンドルの左右に操舵した時の反応だ。クイックで過敏な反応は無く、切った分だけ素直に反応してくれて安心感がある。
日産キックスのハンドリングはスポーティーな印象を受けるクイックなハンドリングが特徴だ。街乗りで向きを変えるシーンや車線変更をするシーンでは、きびきびとした軽々しい車の動きを表現している。しかし、ハンドルを全切りすると『ガツン』と音をあげて止まる。近年の車は、全切りするとゆっくりと止まるようにしているが、キックスはコストカットしているためか、ガツンと止まってしまう設定になっている。
ハンドルに関しては設計の新しいヴェゼルのほうが、高いレベルでまとまっていた。
ドライビングポジションについて
ヴェゼルはチルト・テレスコ前後上下の位置調整に対応。ペダルレイアウトのほうも違和感がないため、体格に合わせたドライビングポジションを取ることができる。しかしパワーシートを採用していないため、手動での位置調整となる。
キックスは前後左右のハンドル位置調整に対応し、ペダルレイアウトも違和感がないためドライバーの体格に合わせたポジションを取ることができる。しかし、シートはヴェゼル同様に手動調節となる。
運転視界について
ヴェゼルは車高がキックスより30mm小さい1,580mm。キックスよりもやや低いドライビングポジションとなる。ヴェゼルは縦に大きいフロントガラスを配置し、視界が縦方向に開けていて運転しやすい印象を受ける。
さらにダッシュボードを低く水平基調にデザインしており、車幅感覚がつかみやすく解放感もあって非常に運転しやすい。Aピラーの運転視界は、ドア上部にサイドミラーを配置し運転視界を確保している。
キックスは車高がヴェゼルよりも30mm高い1,610mm。コンパクトSUVとしては、車高が高く見晴らしの良いドライビングポジションが特徴だ。SUVを運転しているような感覚を得ることができる。大きめのフロントガラスが配置されているため、見晴らしは縦方向に関しては良いものとなっているが、ヴェゼルと比べると解放感は劣っている。
コンパクトSUVとしては、傾斜を抑えたAピラーを採用しているため比較的死角は少ないと言えるが、サイドミラーがAピラーの根元から配置されているためサイドの死角を大きくしている。
乗り心地について
新型ヴェゼルは、トヨタ車のように落ち着いたサスペンション設定となっており柔らかめだ。非常に高いボディ剛性とサスペンションが組み合わさり高いレベルの乗り味を体感することができる。高速道路のつなぎ目を乗り越えるシーンでは、強く沈み込むような動きでしっかりと突き上げを逃がしてくれる。
キックスは、スポーティーな印象を受けるサスペンションで固めな乗り味だ。一般道路を走行中は、跳ねるような突き上げの印象が目立つ。
車高が1,610mmと、他のコンパクトSUVと比べるとやや高いのもあり、前後に突っ込むような挙動や道路のつなぎ目を乗り越える際に2~3回振動するところが気になり、ボディ剛性や設計が古いと感じた。これだけスポーティーな車なら、もう少し車高は低いほうが良い。高い車高で販売したいのであれば、サスペンションは設計を見直したほうが良いと感じた。
静粛性について
ヴェゼルは高いボディ剛性なのに、ロードノイズをカットしてくれている。また走行中の静粛性は、コンパクトSUVとしては非常に高く、モーターのみで加速しているときはかなり静かだ。
キックスはパワートレインの静粛性はホンダe:HEVよりも優れているため、低速の加速を行う時は非常に静かだ。ただ、中速領域からアクセルを踏み込んだ際はエンジンが駆動し、直列3気筒エンジンと新型ノートより古いパワートレインを搭載しているため、エンジン音はホンダe: HEVよりもノイズが目立つと感じた。
安全・先進装備について
新型ヴェゼルは、ホンダの弱点といえる安全装備に力をいれた車になっている。
- 不注意による急発進を装備する→【誤発進抑制機能】
- 壁などへの衝突回避を図る→【近距離衝突軽減ブレーキ】
- 歩行者との衝突回避を図る→【歩行者事故低減ステアリング】
- など充実した内容となっている。しかし、ヴェゼルの車線維持支援システムは60km/h未満は非対応となっているため、時代から取り残されているということになる。
キックスは現代として不足のない内容だ。クルーズコントロールは全車速対応で、後方視界を確保するデジタルミラーのインテリジェントルームミラーをオプションで設定。さらにコーナリングでの安定性向上システムなどを採用しており、日産ならではの装備を採用するキックスのほうが先進装備が多い。
燃費について
e:HEVを搭載する新型ヴェゼルは、WLTCモードで25.0km/Lの燃費性能となっており、街乗りではらくらくと20km/Lを超える燃費性能を持っている。ヴェゼルはハイブリッドモーター、エンジン出力共にキックスよりも上のスペックを持っているため、燃費数値が優秀だ。
これに対してe-POWERを搭載するキックスは、WLTCモードで21.6㎞/Lの燃費性能となっており、モーターのパワーにこだわっているため、ライバルのコンパクトSUVと比べてしまうと燃費はやや低い。
どちらを買うべきか?
ヴェゼル | キックス | |
加速感について | △ | ◯ |
ハンドリングについて | ◯ | ✕ |
ドライビングポジションについて | ✕ | ✕ |
運転視界について | ◯ | ✕ |
乗り心地について | ◯ | ✕ |
静粛性について | ◯ | ✕ |
安全・先進装備について | △ | △ |
燃費について | ◯ | ✕ |
合計 | ◯5つ | ◯1つ |
上記の表を見ると明確で、ホンダヴェゼルを買うべきという結果になる。しかし、日産キックスにも光る長所があり、e-POWERのトレインの凄さをしっかりと感じることができる。ここに魅力を感じるならば検討しても良いと思うが、車の設計・剛性・静粛性はホンダの新型と比べてしまうと劣ってしまう。
ホンダのヴェゼルはオールラウンドプレイヤーな性格をもった一台となっていて、安定した性能をもっている。しかし、ホンダセンシングに関しては機能が少ないため、今後のアップデートによって、ユーザーに還元して車線維持支援システムを全車速対応にして欲しいと思うところである。
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