2021年に発売された大人気SUVであるホンダのヴェゼルとカローラクロス。現在、大人気のコンパクトSUVで価格も近い2台を3日間試乗してきた。いくつかの違いが感じられたので、走行比較をしていく。
各項目において◯✕判定をし、最終的にどちらを買うべきか結論付けていくので参考にしてほしい。
価格とグレードについて
ホンダヴェゼルは、ガソリンとハイブリッドエンジンの2種類のパワートレインがあり、グレードはe:HEV X・e:HEV Z・e:HEV PLaYの3種類の展開となっている。ハイブリッド車の価格は2,658,000円〜3,298,000円の設定で販売される。
これに対してカローラクロスも、ガソリンとハイブリッドエンジンの2種類のパワートレインがあり、グレードはG・S・Zの3種類の展開となっている。ハイブリッド車の価格は2,590,000円〜3,199,000円の設定で販売される。非常に価格感が近いこの2台は、どちらも納期が半年以上になるほどの人気を集めている。
加速感について
ヴェゼル | 直列4気筒1.5Lエンジン |
最高出力 | 106PS/5,200rpm |
最大トルク | 127Nm(13.0kgf・m)/4,500〜5,000rpm |
モーター最高出力 | 131PS(96kW)/4,000〜8,000rpm |
モーター最大トルク | 253Nm(25.8kgf・m)/0〜3,500rpm |
ホンダハイブリッドのe:HEVを搭載するヴェゼルは、エンジン走行とモーター走行の巧みな使い分けによるホンダらしい走りが特徴である。3つのハイブリッドシステムを使い分けて走行させる形式となっている。
街乗りの領域では、モーターのみで走行するEVモードを使用する。50km/h付近までの加速は、エンジンを完全に止めて走ることができるため、電気自動車のような感覚で非常に滑らかな走行を実現している。ほかにもハイブリッドモード・エンジンモードを備え、強い加速がほしいときや高速領域でエンジンを最適に使い分け、場合によってはエンジンを駆動輪へ直結して加速できる。ほかのメーカーでは力不足感が目立つハイブリッドシステムだが、ホンダヴェゼルはモードの使い分けによって高速域でも気持ちの良い加速感を実現している。
さらに、カローラクロスよりも59馬力も大きいモーターによって、停止状態からの加速もモーターのしっかりとした太い加速感が味わえる。
カローラクロス | 直列4気筒1.8Lエンジン |
最高出力 | 98PS/5,200rpm |
最大トルク | 14.5kgf・m/3,600rpm |
モーター最高出力 | 72PS |
モーター最大トルク | 163Nm |
カローラクロスに搭載されるシステムは、C-HRなどから引き継いだシステムなので目新しさはない。スペック上はとくに光る部分もなくPRする点もないので、普通の車と言える。
ハンドリングについて
ヴェゼルは高いボディ剛性を活かした非常に優秀なハンドリング性能を持ち、中立付近の落ち着き感は素晴らしいものがある。ハンドルを切り出した反応はカローラクロスよりゆったりとしており、高速道路を走行しているときはクラスを超えた走りの安定性を持っている。しかし、ホンダ車にしては遊びが多い印象だ。
ヴェゼルは全高1,590mmで、SUVのなかでは低いサイズである。そのため高速コーナー走行するときにおいても非常に安心して運転することができた。
カローラクロスは意外にも素晴らしい仕上がりを見せている。四角いボディにも関わらず剛性がしっかりとしており、走行性能に注力したC-HRと似たフィーリングを持ち、ハンドルを切り出した際には素早く反応してくれる。
ただ、カローラスポーツは全高1,620mmとSUVらしいルーフの高さを持つので、首都高の急なコーナーだとロールするような挙動を少し感じた。
ドライビングポジションについて
ヴェゼルは、ハンドルをチルト・テレスコにより前後上下の位置調整に対応している。アクセル・ブレーキペダルのレイアウトも違和感がないので、体格に合わせたドライビングポジションを取ることが可能だ。しかし、パワーシート非採用なので手動調整が必要である点は注意してほしい。
カローラクロスも、ハンドルをチルト・テレスコにより前後上下の位置調整に対応している。ペダルレイアウトについても違和感なくポジショニングできる。さらにパワーシートを採用しているため、微妙な位置調整にも対応している。しかし、シート位置を記憶するメモリー機能がない点は注意してほしい。
運転視界について
ヴェゼルは縦方向に大きいフロントガラスを配置しているため、視界が非常に開けていることが確認できる。さらにダッシュボードを低く水平基調にデザインしているため、車幅感覚が掴みやすい設計となっている。Aピラー根元付近の視界も確保しているので、死角が少ない車である。
カローラクロスも運転視界が開けていて、とても運転しやすい印象であった。Aピラー根元付近の視界もしっかりと確保されており、死角が少ない車両であった。しかしAピラーの傾斜が強く、運転席に乗り込んだときに圧迫感があり、ピラーの死角は少し大きい印象があるので注意してほしい。
乗り心地について
新型ヴェゼルは、トヨタ車のように落ち着いたサスペンションの設定で柔らかい乗り心地となっている。とても高いボディ剛性とサスペンションが組み合わさり、高いレベルの乗り心地を体感することができる。高速道路のつなぎ目を乗り越えるようなシーンでは、強く沈み込むような動きがあり、突き上げをしっかりといなしてくれる。完成度はかなり高いと言える。
カローラクロスは、とても質感の高い乗り心地を実現していて非常に驚きだ。カローラクロスはFF車で部品点数が少なく、コストの安いトーションビーム式を採用している。これはヴェゼルと同じサスペンションの企画で、左右のサスペンションが繋がっているものだ。両車ともトーションビーム式を採用しながらも高いレベルの乗り心地を実現している。
静粛性について
ヴェゼルは高いボディ剛性の恩恵があり、ロードノイズをしっかりとカットしてくれている印象がある。また、走行中の静粛性はコンパクトSUVとして非常に高く、モーターのみで加速しているときは驚くほど静かだ。高速道路においても高い静粛性を維持しており、日産キックスやトヨタヤリスクロスなどと比べると、ひと回り以上高い静粛性を実感できる。
しかし、ヴェゼルは加速時のエンジン音が気になるポイントだ。一般道でアクセルを踏み込んだ際にエンジンが唸るような音がうるさく感じるだろう。
カローラクロスのパワートレインの静粛性としては、使い分けを行うホンダe:HEVよりエンジンの駆動領域が多いので、低速での走行が多い人はヴェゼルのほうが静かだと判断するだろう。しかし、カローラクロスもボディ剛性をしっかりと確保しており、高速道路を一定の速度で走行しているようなシーンではコンパクトSUVとしてかなり静粛性の高い車となっている。
安全・先進装備について
新型ヴェゼルはホンダの弱点と言える安全先進装備に、それなりに力を入れた車となっている。
- 誤発進抑制機能
- 近距離衝突軽減ブレーキ
- 歩行者事故低減ステアリング
などを採用しており、そこそこ充実した内容となっている。しかし、全車速域で車線維持の支援を実現するトラフィックジャムアシストを非採用としているため、ハンドル維持支援システムは60km/h未満では作動しない。
対してカローラクロスは、現代車として不足のない内容となっている。ヴェゼルで60km/h以上となるハンドル支援については全車速域で対応されている。しかし、ヴェゼル搭載の歩行者との衝突回避を図る安全先進装備は非搭載である。
燃費について
e:HEVを搭載する新型ヴェゼルはWLTCモードで25.0km/Lとなっており、街乗りではゆうに20km/Lを超える燃費性能を実現している。
これに対してトヨタハイブリッドシステムTHSⅡを搭載するカローラクロスは、WLTCモードで26.2km/Lとなっており、ヴェゼルよりも燃費性能が高い。しかし、このくらいの燃費差だと自動車税の金額のほうが大きくなってくるので、自動車税が安いヴェゼルのほうがトータルコストでは安くなるだろう。
どちらを買うべきか?
ヴェゼル | カローラクロス | |
加速感について | ◯ | △ |
ハンドリングについて | ◯ | ◯ |
ドライビングポジションについて | ✕ | ◯ |
運転視界について | ◯ | △ |
乗り心地について | ◯ | ◯ |
静粛性について | ✕ | ◯ |
安全・先進装備について | ◯ | ◯ |
燃費について | ✕ | ◯ |
合計 | ◯5つ | ◯6つ |
以上のように、ヴェゼルが◯5つでカローラクロスが◯6つという結果となった。ご覧の通り、非常に激戦な走行比較となったので参考にしてほしい。